2004年12月公演の『天国と地獄』の上演の記録です。

作品解説

「天国と地獄」は本当の名を「地獄のオルフェ」と言うのですが、その物語はギリシア神話「オルフェオ」のパロディです。 「地獄のオルフェ」は、この作品でのエウリディーチェとオルフェオ夫婦の愛の悲劇を茶化し、そして彼の生きた時代を風刺し、大いに笑わせた作品なのです。

オッフェンバックのオペレッタは、フランスの歴史の中でも最も華やかに輝いた時代、ナポレオン3世の第2帝政時代(1848-70)の風情を最も的確に映し出したものといえます。 その頂点は1867年の万国博覧会の時で、それは革命と戦争に疲れ果てたフランス国民の生活の安定、植民地政策の成功と繁栄を示していました。 当時、パリは華やかな歓楽の都でありました。こうした中、デカダンス(退廃)の華を咲かせていったのです。

1857年、ボードレールが詩集「悪の華」を発表し、その翌年の1858年10月20日、「地獄のオルフェ」が誕生します。 オッフェンバックのこの音楽は、第2帝政時代の人たちを踊らせ笑わせ、パロディを台詞と音楽にしみ込ませてその時代をダイナマイト(1866年ノーベルが発明)爆発させてしまいました。 またことばを変えれば、当時の時代を映す鏡のような作品となったのです。

ロッシーニがオッフェンバックを“シャンゼリゼのモーツァルト”と評したように、どんどんわき出る旋律は誰をも飽きさせません。 しかも人間の本質を描き出しています。彼の真の価値はここにあるのです。だからこそ今日によみがえるのです。 「地獄のオルフェ」はヨハン・シュトラウスのオペレッタ「こうもり」作曲に大きな影響を与えています。 また、サン・サーンスの「動物の謝肉祭」の第4番「カメ」ではカンカンのメロディが使われているのも有名な話です。

上演に関するデータ


作曲: ジャック・オッフェンバック
原台本: リュドヴィック・アレヴィ
エクトール・クレミュー
日本語台本: 中野雄介
初演: 1858年10月21日 ブッファ・パリジャン座(パリ)
歌劇団公演: 2004年12月17日 三鷹市公会堂(東京)


- キャスト -

                                    
ユーリディース(Sop.) 太田 みのり
ジュピター(Ten.) 長谷川 隼也
オルフェ(Ten.) 小柳 毅鎭
アリステ/プリュトン(Ten.) 藤波 由剛
世論(Bass.) 近藤 健一
ディアーヌ(Sop.) 宗和 彩乃
ヴェヌス(Mez.) 渡村 真欧
キュピドン(Mez.) 湯野 まり
ジョン・スティンクス(Ten.) 雑古 岳展
メルキュール(Ten.) 佐藤 啓
ミネルヴァ(Sop.) 和田 礼佳
ジュノン(Alt.) 奥泉 彩子
マルス(Bass.) 海津 俊介
本を読む人(黙役) 高野 恭弥


東京大学歌劇合唱団
女声合唱
SopranoT 太田みのり 宗和彩乃 和田礼佳 奥村美紀子
SopranoU 渡村真欧 湯野まり 坪内聖子 石綿はる美 小沢まや
Alto 奥泉彩子
男声合唱
TenorT 長谷川隼也 藤波由剛 真弓智也(合唱指揮)
TenorU 小柳毅鎭 佐藤啓 雑古岳展
Bass 近藤健一 海津俊介


東京大学歌劇管弦楽団
指揮者 中野 雄介
1st Violin 平岩彩 市ノ渡佳明 多田美智子 桑原清子 織田紗央里 桂正樹
2st Violin 中島和也 古東禎子 三浦知雄 宮川麻友子
Viola 浅尾香容 小林樹 山田紗英子
Violincello 大野紗和子 吉田有里 新津藍 穴田明生 鈴木幸寛
Contrabass 吉野諒子
Picclo&Flute 河西通 松原知恵
Oboe 塚田訓久
Clarinet 石田翼 勝呂優介
Faggot 下山達人
Trumpet 武岡暢 大西敏幸 松野友美 家合幹夫
Trombone 沼澤佳枝
Horn 菅原大嗣 火山健二郎
Percussion 三枝明日香 守田雅隆 矢吹拓也
Pianist 佐藤礼奈 近藤健一 大野紗和子 海津俊介
下線は賛助出演


- 演劇系スタッフ -

  
演出 中野雄介
舞台監督 長谷川隼也
舞台監督補佐 雑古岳展 中島和也
大道具 市ノ渡佳明 勝呂優介 長谷川隼也 中島和也 佐藤啓 雑古岳展
小道具 和田礼佳 宗和彩乃 新津藍 佐藤礼奈
衣装 平岩彩 吉田有里 近藤健一 湯野まり 中埜朝弥子
メイク 和田礼佳 佐藤礼奈
照明 武岡暢 大西敏幸 河西通
音響 長谷川隼也 佐藤啓
字幕 中埜朝弥子
台本製作 中野雄介
字幕製作 中野雄介


- Special Thanks To -

  
ボイトレ 坂野由美子
メイク協力 シナリーエミュ営業所 山下政子
楽譜協力 日本ショット



ものがたり


第一幕

時はギリシャ神話の時代。ヴァイオリン教授オルフェの妻ユーリディースは、隣の羊飼いアリステに夢中。 そのアリステというのは、実は地獄の王プリュトンで、ユーリディースを誘拐するために変装している。

オルフェは、妻を自分の浮気相手と間違えお互いの浮気がばれてしまう。 別れてしまおうとする二人だったがオルフェは世間体を気にし、妻とその浮気相手がいつも恋をかたる麦畑に毒蛇を隠す。 彼女は毒蛇に噛まれ、アリステはプリュトンの姿に戻り、2人は地獄へ道行きと洒落こむ。 オルフェは若い恋人の所へ行けると喜ぶが、世論は「何たる不謹慎」とオルフェを諌める。 そこで、オルフェは世論と共に妻を返してもらうためにしぶしぶ天国へ向かう。

天国では、神々が雲を枕に眠りながら歌っており、そこへ角笛が響き一同は目を覚ます。 ジュピターは女性誘拐容疑でプリュトンを天国に呼び、頭ごなしに怒鳴りつけるが、 ジュピターだって下界の女達と不品行の数々を犯しているとやり返される始末。 やって来た世論とオルフェは「妻を返して欲しい」と歌いジュピターは神々を連れて地獄へ向かうのであった。

第二幕

地獄の王プリュトンの隠れ家。ユーリディースは天国へ出張中のプリュトンに軟禁され退屈し、 その上見張り役の頭の足らないジョン・スティンクスに横恋慕され困っている。

しばらくして、プリュトンがジュピターと共に帰ってくる。 ジョンは慌てて彼女を隠すが、女にかけては人一倍鼻がきくジュピター。 蝿に変身し、鍵穴を抜けてユーリディースを誘惑する。 地獄に飽きていた彼女も待ってましたとばかり、天国への道行きはめでたく成立。

地獄の大広間では、天国と地獄の神々が一堂に会しての大狂宴が行われている。 ユーリディースはバッカスの巫女に変装して、そこに紛れ込む。 隙を見計らい、ジュピターとユーリディースが駆け落ちを…と踏み出そうとすれば、プリュトンが行く手を遮る。

そこに、世論とヴァイオリンを奏でるオルフェがやってくる。 オルフェが心ならずも「妻を返してくれ」と頼めば、これまたジュピターも心とは裏腹にそれを許す。 ただし、「地上に戻るまで、後ろからついてくる妻を振り返ってはならない」という条件つき。

ユーリディースもしぶしぶ承諾し、神々の見守る中、 オルフェの後について地上に戻ろうとした寸前、ジュピターは2人に稲妻を浴びせる。 驚いたオルフェは振り返り、ユーリディースと顔を見合わせ思わずにっこり。 ジュピターもまた、してやったりと破顔一笑。 豆鉄砲をくらったような顔をする世論に、「約束が違う」と青筋をたてるプリュトン。 周囲の神々は「男と女とは、こうしたもの」と大笑い。
フィナーレの音楽が湧き起り、一夜の宴はめでたくおひらき―――。


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