2005年7月公演のビゼー『カルメン』の上演の記録です。

予告編

〜2004年12月19日、三鷹氏公会堂〜
東大歌劇団、第22回本公演…オペレッタ『天国と地獄』。 歌あり踊りありの全2幕、あっという間の2時間半。 観客の方々の反応も上々で、団員も満足感を抱いたまま、帰路に着きました。

…そんな、良い意味で『問題作』となった前作から早半年。 今年も東大歌劇団が三鷹の舞台に帰ってきます。 しかも今回は世界で最も有名なオペラを引っさげて。

そう、世界を魅了した一人の女。 散るがゆえに美しい、紅き女。 物語に冠せらるる、そのジプシーの名は

『Carmen』

あまりにも有名な旋律が、哀しき女達を抱く。 誰もが知る名曲が、哀れな男達を彩る。 音楽が言葉を超え、人々を導く。 物語を終わりへと誘う、運命の主題。 銀の煌めきが彼女を貫く時、その血で誰が救われたのだろうか。

渾身の出来のチラシ、ポスターで一足先に雰囲気をお楽しみください。





作品解説

世界一有名なオペラと言えば、今作『カルメン』。 オペラにあまり馴染みがない方でもその名くらいは聞いたことがあるでしょう。 テレビCMなど、様々な場面で使われている有名なプレリュードや闘牛士の歌など、一度耳にしたら忘れられないメロディーで彩られた今作ですが、初演は1875年、パリのオペラコミック座で行われました。
しかし当時は過激な作風や、主人公がジプシーであることから人々には受け入れられず、初演は失敗に終わりました。 作曲者のビゼーは、そのことに大きな衝撃を受け、3ヵ月後にこの世を去ってしまいました。

しかしビゼーの死後、エルネスト・ギローが原典のオペラコミック版(音楽(歌)の間を台詞で繋ぐように書かれたもの)を書き換えたグランドオペラ版がビゼーの死後に再演され、大成功を収めたのです。 その後も『カルメン』は上演されるごとに人気を着々と高め、今では世界で最も上演回数が多いオペラのうちの一つにも数えられるほどまでになったのです。

また、この有名なオペラは様々な作曲家たちの手によって、色々な組曲や独奏曲に編曲され、演奏されることもあります。 有名なものはビゼー自身やギローによって編纂された『カルメン組曲』や、サラサーテによる『カルメン幻想曲』、異色なものとしてはシチェドリンによる弦楽器・打楽器のみを用いたバレエ曲、『カルメン組曲』などがあります。 また名ピアニスト・ホロヴィッツが『カルメンの主題による変奏曲』を作っています。
多くの音楽家たちに影響を与え、世界的に有名なオペラとなった本作、ビゼーにもこの状況を見て、空の上から喜んでいるのかもしれません。


上演に関するデータ


歌劇『カルメン』 全4幕 フランス語上演
作曲: ジョルジュ・ビゼー
原作: プロスペル・メリメ
台本: アンリ・メイヤック/ルドヴィク・アレヴィ
初演: 1875年3月3日  オペラコミック座(パリ)


指揮 勝呂優介
演出 近藤健一


- キャスト -

カルメン(mez.

大野紗和子/太田みのり

ホセ(ten.

長谷川隼也

ミカエラ(sop.

宗和彩乃

エスカミーリョ(bar.

三好隆憲

スニガ(bas.

海津俊介

フラスキータ(sop.

奥村美紀子

メルセデス(mez.

渡村真欧

ダンカイロ(bar.

雑古岳展

レメンダード(ten.

小柳毅鎭

モラレス(bar.

佐藤啓



東京大学歌劇合唱団

Soprano

太田みのり 奥村美紀子 小沢まや 神谷夏子
宗和彩乃 坪内聖子 山本摂子 湯野まり 和田礼佳

Alto

池山由香 大野紗和子 佐藤礼奈 前田萌 渡村真欧

Tenor

青島茂 小柳毅鎭 佐藤啓 雑古岳展 長谷川隼也 真弓智也 宮原潤也

Bass

伊藤祐輝 海津俊介 菅野普 近藤健一 長瀬修 三好隆憲 森田賢治



東京大学歌劇管弦楽団

Conductor

勝呂優介

1st Violin

平岩彩 中島和也 飯塚恵理 古東禎子 三浦知雄 桑原清子 

2nd Violin

宮川麻友子 市ノ渡佳明 奥本高行 多田美智子
川神裕 吾妻さくら 佐々木晶子

Viola

樋野貴宏 大野朗子 小林樹 山田紗英子 池田祥子

Violoncello

新津藍 川神千裕 北篤佳 吉田有里 穴田明生 鈴木幸寛 

Contrabass

吉野諒子 

Piccolo & Flute

河西通 田中邦彦 大林恵子 江戸野晶子 黒田瑞大 園直希

Oboe

塚田訓久 油井美咲

Clarinet

石田翼 伊藤佳正

Fagotto

下山達人

Horn

菅原大嗣 色田敦 角尾宣信 内山佳紀

Trombone

沼澤佳枝 鈴木千穂 末川摩衣

Trumpet

武岡暢 川井如真 平川雄一郎 松野友美 家合幹夫 今井彩乃

 Percussion

三枝明日香 長岡優 守田雅隆 伊藤弦太

Harp

中村愛

Pianist

海津俊介 佐藤礼奈 勝呂優介 平岩彩 大野紗和子 和田礼佳 雑古岳展

(下線は賛助出演)

- 舞台制作スタッフ -

演出

近藤健一

舞台監督

雑古岳展

大道具

佐藤啓 市ノ渡佳明 雑古岳展 中島和也 長谷川隼也

小道具

佐藤礼奈 和田礼佳 宗和彩乃 新津藍 太田みのり

衣装

湯野まり 宮原潤也 坪内聖子 平岩彩 近藤健一 吉田有里 渡村真欧

メイク

佐藤礼奈 和田礼佳

照明

武岡暢 中島和也 河西通

音響

佐藤啓 長谷川隼也

字幕

中野雄介

字幕製作

近藤健一 海津俊介 雑古岳展 佐藤啓 三好隆憲 和田礼佳



- Special Thanks To -

ボイストレーニング

坂野由美子

メイク協力

シナリーエミュ営業所 山下政子

照明オペレーション

佐々木悠 

ダンス指導

東京大学フラメンコ舞踏団

楽譜協力

村田健司




ものがたり


第一幕 セヴィリアのタバコ工場前の広場

兵士や若者は、タバコ工場の女工、その中でもカルメンにいつも言い寄っているが、ホセだけは興味をもたない。 ところが花を投げつけられるとカルメンのことが気になり出してしまい、許嫁のミカエラが来ている間もカルメンのことが頭から離れない。 そこへカルメンが喧嘩騒ぎを起こしたというので護送を任されるが、カルメンの巧みな誘惑に負けて逃がしてしまう。

第二幕 リーリャス・パスティアの酒場

店じまいの時間になったが、ちょうどエスカミーリョがやって来たので祝杯をあげる。
やっと客達が帰り、カルメン、フラスキータ、メルセデスが残っているところへ、ダンカイロとレメンダードが密輸の話を持って帰ってくる。 早速密輸へ出発しようとすると、カルメンはホセを待っているから行けないと言う。

カルメン以外が店の奥に隠れたところへホセがやって来る。 カルメンはホセのために踊るが、ホセが帰営だと言って帰ろうとするので怒る。 それに対してホセはいかにカルメンを愛しているのかを歌うが、そこまで愛しているのならとカルメンはホセを密輸仲間に引き入れようとする。 ホセがそれを拒否して帰ろうとしたところへ、上官のスニガがカルメンを訪ねてやってきて決闘になってしまう。 二人はダンカイロ達に取り押さえられ、ホセは成り行き上仕方なく密輸仲間になる。

第三幕 岩山

密輸団が休憩している。 フラスキータとメルセデスがカード占いを始めると次々と幸せなお告げがあるが、カルメンが占うと何度やっても死とばかり出る。 そこへ偵察に行っていたダンカイロとレメンダードが戻って来て、全員で出発する。

誰もいなくなったところへ、ミカエラが愛していたホセをカルメンから奪い返しにやって来るが、少し離れたところで荷物を見張っていたホセの銃声に驚いて隠れる。 今度はエスカミーリョがやって来るが、カルメンを探しに来たと聞いてホセは決闘を始めてしまう。 騒ぎを聞きつけた密輸団が戻って来て決闘は中断されるが、今度は隠れていたミカエラが見つかってしまう。 ミカエラが必死にホセを連れて帰ろうとしてもホセはカルメンに執着するが、母親の危篤を伝えるとやっとホセは帰る決断をする。 そこへエスカミーリョの高らかな闘牛士の歌が遠くから聞こえてくる。

第四幕 セヴィリアの闘牛場前の広場

観客や売り子が集まっているところへ闘牛士が次々とやって来て、最後にエスカミーリョと、今では彼の恋人となったカルメンが現れる。 闘牛が始まる段になって、フラスキータとメルセデスがカルメンにホセが隠れていると忠告するが、カルメンは敢えてホセに会うため広場に残る。 二人だけになったところで、何もかも失ったホセはカルメンのためなら盗賊でも何でもするから見捨てないでくれと懇願するが、カルメンは拒否する。

そこへ闘牛場から歓声が聞こえてくる。 エスカミーリョのところへ向かおうとするカルメンを見てホセは豹変し、俺について来いと脅迫するが、カルメンは再び激しく拒否する。 それでもカルメンを諦めきれないホセは、最後に自分について来たいかと問うが、カルメンはそれを拒否し、さらに昔ホセに貰った指輪を投げつける。 そしてホセはカルメンを自分のものにするため、刺し殺してしまう。


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