作品に関するデータ


作曲: ジャコモ・プッチーニ
原作: アンリ・ミュルジェ「ボヘミアンたちの生活」
台本: ルイージ・イッリカ、ジュゼッペ・ジャコーザ
初演: 1896年2月1日、トリノ・レッジォ劇場

東大歌劇団の上演に関するデータ

1995年12月 9日 三鷹市公会堂

- 演奏 -

総監督(指揮/演出): 片寄 隆典

- キャスト -

ミミ (S:お針娘) 橋本 佳代子
ロドルフォ (T:詩人) 小林 正俊
ムゼッタ (S:パリの町娘) 金沢 登紀子
マルチェッロ (Br:画家) 伊香 修吾
ショナール (Br:音楽家) 藤井 和之
コルリーネ (Bs:哲学者) 富樫 祐一
ベノア (T:大家) 細入 勇二
アルチンドロ (T:役人) 高澤 晃行
パルピニョール (T:玩具屋)森 一将


東京大学歌劇合唱団
阿部 悦子、小野 芳、木下 志津子、国井 由生子、
栃本 直子、露木 玲、深野 友美、森野 里枝、
細入 勇二、高澤 晃行、森 一将

東京大学歌劇管弦楽団
Concert Mistress 高橋 篤子

Flute/Piccolo 斎藤 潔、野間 健司、遠藤 素子
Oboe/English-Horn 倉持 優子、難波 広美、坂口 功
Clarinet/Bass-Clarinet黒川 敦郎、濱田 雅裕、廣江 奈津子、千代島 由佳
Bassoon 松川 一宏、橋口 健介
Horn 佐久 間毅、大鎌 直子、大野 健太
Trumpet 高地 勝幸、菅江 貞亨、榎木 勝規
Trombone/Tuba 小泉 秀雄、大倉 健嗣、小林 悟
Percussion/Harp 永野 裕之、浜崎 広美、古屋 美和、佐藤 敬
Violin 大愛 崇晴、岸武 弘樹、高橋 篤子、田中 愛幸、 仲神 龍一、藤森 慈子、光田 晶、柳沢 賢、 志磨 健、大山 泰弘、矢野 亮子、和田 紀子
Viola 尾崎 輝宏、大門 香織、三宅 章仁、鈴木 弘一郎
Cello 小林 浩希、長谷川 潤一、山口 芽久美
Doublebass 小宮 陽一、山之内 正

- その他舞台賛助出演 -

大道芸人 マラバリスタ (中村亨、馬込綾子、奥村真紀子、南博史)
モミュスのウェイター 石原 大助、貝塚 芳久
第二幕パレードの隊長 小松 晋一郎


- スタッフ -

日本語訳詞片寄 隆典
舞台 井上 正剛
照明 大谷 悠紀子



なお、上演に使用したオーケストラ・パート譜は、 トヨタ・ミュージック・ライブラリーより借用させていただきました。

ものがたり


第一幕 屋根裏部屋で


クリスマス・イヴ。
下町の屋根裏部屋で生活する若き芸術家の卵たち。
「画家」マルチェッロは、あまりの寒さに悪態をつきながら絵を描いている。
「詩人」ロドルフォは窓から外を眺め、火のない自分たちのストーブを罵る。
我慢のできなくなったマルチェッロは、椅子を燃やそうとするが、 ロドルフォはその代わりに自分の原稿を燃やそうと提案する。
小さな炎で、二人は暖をとる。
そこへ、「哲学者」コルリーネが大袈裟に嘆きながら入ってくる。
本を質に入れて金を得ようとしたのだが、クリスマスで休業だったのだ。
彼はストーブに火があるのに気付き、ロドルフォを押し退けて暖まる。
しかし、間もなく火が消えてしまう。


自慢話をするショナール (藤井和之=一番左)


突然、ドアが開き、両手に品物を抱えた小僧たちがとびこんでくる。
3人が驚いていると、硬貨をばらまきながら『音楽家』ショナールが入ってくる。 彼はイギリス人に雇われ、首尾良く臨時の収入を得たのだ。
ショナールはそれを自慢するが、他の3人はそれを無視して食事の支度にかかる。
しかしショナールは食べ物をとりあげ、家ではワインを飲むだけにして、 食事はカルチェ・ラタン(パリの下町)へ出掛けてとることにしよう、と提案する。

一同も賛成し、支度を始めると、大家のベノアがやってくる。
家賃を3ヶ月分も滞納しているマルチェッロたちは大慌て。
しかし、マルチェッロの機転で、ベノアに酒を飲ませ、浮気を告白させてしまうと、 一同はそれを口実にして『我らの住まいが汚れるぞ!』 と騒ぎ立て、ベノアを追い出してしまう。

支度のできたマルチェッロたちは出掛けようとするが、 ロドルフォはやりかけの仕事を仕上げてしまいたい、といって一人残る。
するとそこへ、隣の部屋に住むお針娘ミミが明かりを借りにやってくる。
ミミは病弱で、階段を昇ってきただけで息切れし、 ロドルフォの部屋に入った途端に気を失ってしまう。
ロドルフォはミミを介抱し、彼女に惹かれる。
ミミは蝋燭に火をつけてもらうと、自分の部屋に帰ろうとする。
しかしすぐに、鍵が見付からない、どこかに落としてしまった、と言って戻ってくる。
すきま風でミミの蝋燭が消えてしまう。
そして慌てて駆け寄ったロドルフォの蝋燭も。

ロドルフォの求めるままに、 ミミも『私はミミ、でも本当はルチア』 と名乗り、屋根裏部屋で花作りをしている自分の身の上を語り始める。

暗闇の中で、二人は鍵を探し始める。
ロドルフォは鍵を間も無く見付けるが、すぐにそれを隠してしまう。
ロドルフォとミミの手が触れ合う。
そして、ロドルフォはミミの手を取り、 『 なんて冷たい手、僕が暖めよう 』 と歌い、彼女に恋したことをうちあける。

月明かりの中、ロドルフォは、『君の姿は、夢に描いた天使の姿と同じだ』と、 ミミの美しさをたたえる。
すっかりうちとけた二人は、腕を組んで街へと出掛けていく。

第二幕 カルチェ・ラタン



大道芸人も友情参加


カルチェ・ラタン(パリの繁華街)は、クリスマスの買い物を楽しむ多くの人で賑わっている。
ショナールは骨董屋でラッパを、『哲学者』コルリーネは古着屋でコートを買っている。
マルチェッロは街を行く若い娘達を口説いている。
彼には昔ムゼッタという恋人がいたのだが、彼女には貧乏な生活が耐えられず、捨てられたのだ。

芸術家の卵たちはカフェ・モミュスに集まる。
ロドルフォとミミも遅れてやってくる。
ロドルフォはミミを仲間達に紹介する。
彼らは一人一人歓迎の言葉を述べる。

玩具屋のパルピニョールが、子供達に囲まれてやってくる。
母親たちは子供を連れて帰ろうとするが、子供が泣き出してしまうのでとうとう玩具を買ってやる。
クリスマスの楽しい一時。


ミミは、ロドルフォにボンネットを買ってもらった、言う。
それを聞いたマルチェッロは、急に機嫌を悪くしてしまう。
場を取り繕おうと、ショナールとコルリーネは乾杯しようと提案する。
そのとき、けたたましい女の笑い声が街に響く。
なんとムゼッタもカフェ・モミュスにやってきたのだ。
しかも、金持ちのパトロン、アルチンドロと共に、美しく着飾って。
ムゼッタのことを知らないミミに、マルチェッロは、 『あいつの好物は男の心臓で、俺も喰われた』と言う。
一方、マルチェッロに気付いたムゼッタも、 わざとマルチェッロの近くのテーブルに陣取り、彼を挑発するように 『私が街を歩けば、みんな振り向くわ』と歌う。

ムゼッタはアルチンドロにも飽きていた。
突然彼女は、靴が合ない、足が痛い、と叫ぶと、別の靴を買ってきて、とアルチンドロを追い払い、 その間にマルチェッロの胸にとび込む。

仲間達はカフェの勘定をアルチンドロのつけにしてしまうと、 ちょうどやってきた軍隊のパレードに紛れ込んで逃げてしまう。
やっと靴を買って戻ってきたアルチンドロは、誰もいないのに気付き、 また勘定のあまりの高さに驚き、腰をぬかしてしまう。

第三幕 アンフェール関門で


二月。
アンフェール関門では、早朝から、働きに出る掃除人夫や市場へ向かう農家女たちが行き来している。
関門の近くの酒場の中からは、ムゼッタの歌声が響いてくる。

そこへ、咳に身体を震わせながらミミがやってくる。 酒場で働いているはずのマルチェッロを訪ねてきたのだ。
店からマルチェッロが出てくると、ミミは、『ロドルフォが自分の心を疑うようになった』、と言う。
助けて、と泣いているミミに、マルチェッロはロドルフォも今店に来ていると告げ、一旦家へ帰るように諭す。
ミミが去ったあと、目を覚ましたロドルフォが『ミミと別れるよ』と言う。
マルチェッロが理由を聞くと、 『ミミは浮気な女なのさ、貴族の息子が見ている時に、いかにも気があるようなそぶりをしてみせる』と語る。

しかし、マルチェッロがそれを信じずに問い詰めると、ロドルフォは 『ミミは病気なんだ』と言い、 貧乏暮しの自分と一緒では病気がますます悪くなるばかりだ、 と思い詰めていることを告白する。
そしてその話を、いつのまにか戻ってきたミミが、物陰から立ち聞きしてしまう。
ロドルフォが『ミミは死んでしまうかもしれない』と言うと、ミミは思わず泣き出してしまい、 その声と咳とでロドルフォは彼女がすっかり話を聞いてしまったことを知る。
ロドルフォは『今のは冗談さ』と取り繕おうとするが、ミミは彼と一緒に店の中に入るのを拒否しる。
一方、店の中からはムゼッタのけたたましい笑い声が聞こえ、 マルチェッロは『浮気は許さない』と飛び込んでいく。


「ミミは病気なんだ」と言うロドルフォの話を、ミミは物陰から聞いてしまう


ロドルフォの本心を知ったミミは、『あなたと出会う前の暮らしに戻るだけよ』 と、彼に別れを告げる。
ムゼッタはマルチェッロと喧嘩をして、店を飛び出していく。
ミミとロドルフォは、冬に別れるのは寂しい、 せめて春まで一緒にいよう、と語り、手をとりあって帰っていく。

第四幕 屋根裏部屋で


時は巡って再び冬、場所はあの下町の屋根裏部屋である。
ロドルフォとマルチェッロは、お互い相手には仕事をしているようにみせかけているが、 実はそれぞれの別れた恋人を思っている (『おお、ミミ、君はもう帰ってこない)』)。
そこへ、ショナールとコルリーネが食料を持って帰ってくる。
パンと塩付けニシンの簡素な食事だが、一同はそれをご馳走に見立ててふざけあい、楽しむ。

食事が済むと、ショナールが『踊りはどうだ』と提案し、 一同は部屋を片付けるとさまざまな踊りをおどって楽しむ。
やがて、ショナールとコルリーネが火かき棒でチャンバラを始め、大騒ぎを演じる。

そんなところへ、ムゼッタが突然飛び込んでくる。 ミミも一緒だが、身体の具合いが悪く、もう歩けない、という。
ロドルフォは慌てて飛び出して行き、 ショナールとコルリーネはベッドを部屋の真ん中へ寄せる。
ロドルフォに身体を預けて入ってきたミミは、 『また一緒にいていい?』と尋ね、ロドルフォは『いつまでも』と答える。
ムゼッタはミミを見付けた時の様子を語る。
ミミの病気が相当に悪いことは、誰の目にも明らかだった。
ムゼッタは自分の耳飾りをマルチェッロに渡すと、 『それを売って、お薬と、お医者をよんできて』と言う。
そして自分も、手が冷たい、というミミのためにマフを取りに出ていく。
コルリーネは自分の愛用のコートを売って、少しでも金を作ろうと決心する(『古いコートよ』)。
そしてロドルフォとミミを二人きりにしてやろう、とショナールに提案し、出ていく。

ミミはロドルフォに『あなたは私の愛、私の命』と言い、 ずっと彼を愛し続けていたことを告げる。
ロドルフォがミミのボンネットを取り出してみせると、彼女は喜ぶ。
そしてミミは出会った夜の思い出を語り、 ロドルフォが鍵を隠してしまったのを知っていた、と告白する。
そして彼の口調を真似て『なんて冷たい手……』と歌い出すが、 その途端に激しく咳き込んでしまう。

ロドルフォはミミを気遣い、 ショナールも『どうした』と慌てて飛び込んでくるが、 ミミは二人を安心させるように『大丈夫よ』という。
やがてマルチェッロとムゼッタが戻ってくる。
マルチェッロは気付け薬をロドルフォに渡す。
ムゼッタがマフをわたすと、ミミは『もうこれで冷たくないわ』と喜ぶ。
そして、泣き出したロドルフォに『もう大丈夫』と微笑むと、 静かに眠りに入る。

ムゼッタは薬を暖めながら、『どうか神様、お救い下さい』と祈りを捧げる。
ショナールがミミの様子がおかしいのに気付く。 彼女はすでに息を引き取っていたのだ。
だがロドルフォはまだそれに気付いていない。
帰ってきたコルリーネがミミの様子を聞くと、『ああ、落ち着いた』と答える。
しかし、ショナールやマルチェッロの態度から事実を悟ると、 ミミの亡骸の上に、彼女の名を叫びながら泣き伏す。

舞台裏


その一日

7:30
・・・大道具の運搬のために、東京大学駒場キャンパスへ集合。
輸送料をケチるため、大道具・小道具はすべてバラバラに分解し、 ワンボックス車1台にすべて搭載できるようにしてある。
電子楽器などは普通乗用車2台に分けて積み込み。この作業に1時間。 その後、一同は車、電車などで会場へ向かう。

10:00
搬出に最後まで立ち会っていた総監督がやっと現地着。照明仕込み開始。
作業の手順を把握しているのが総監督だけなので、時間ばかり恐ろしくかかる。
一般団員にも、舞台のことを無理矢理にでも勉強させておけばよかった、と反省。
大道具はさらに遅れて到着。組立は、団員全員でやる。 主役でも例外ではない。

12:00
正午。本当ならお昼休みだけど、食事をしている暇なんかない。 ドリンクタイプのカロリーメイトを流し込んだだけで作業続行。

15:00
まだ大道具組みあがらず。そろそろ焦り出す。

16:00
げっ、もうこんな時間?ステリハしてる暇ないじゃん。
仕方がないので照明と音響機材のテストをかねて、 第一幕の「冷たい手」を通すだけでおしまい。
まあ、演奏面ではもう仕上がっている、というのが建前だから、 ステリハをとばしても音は問題ないはず・・・だったのだが、 ・・・第2幕だけでも通しておきたかった、と後悔する羽目になる。


開演直前の楽屋前

17:00
いよいよ開演。この半年間の苦労が花を咲かせるかどうかが試される。 ・・・さぁ、もう後は知らないもんね。


ピット内で棒踊りを披露する(違うって)総監督カタヨセ。



そして上演中はいろいろあった・・・。
第一幕はまあ無難に終わる。
しかし第二幕はハプニングの嵐だった。
主役が歌詞を忘れ、間違えた。
小道具のテーブルは正しいタイミングで出てこなかった
。 『もう演奏が止まってしまうんじゃないか』 と思う瞬間が何回もあった。
日程があわず、全員揃っての通し稽古がとうとうできなかったのが最大の敗因だろう。 なんとか最後までいった時には正直ほっとした。
気を取り直して第三幕。
ミミ役の橋本カヨゾーが、迫真の『咳』を聞かせる。 ・・・半年間の練習の賜物だそうだ (歌も練習しろよ)。
照明はぶっつけ本番 (これは仕方ない) だったが会心の出来。 朝焼けの感じがすごく奇麗だ。
そして最終幕。
・・・泣けた。


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