'96年6月のレハールの『メリー・ウィドー』の上演の記録です。 ビデオからの取り込み画像もあわせてお楽しみ下さい。

作品に関するデータ


作曲: フランツ・レハール
原作: アンリ・メイヤック『大使館職員』
台本: ヴィクトール・レオン、レオ・シュタイン
初演: 1905年12月30日、アン・デア・ウィーン劇場

東大歌劇団の上演に関するデータ



1996年 6月22日 三鷹市公会堂

- 演奏 -



総監督 (指揮): 永野 浩之

- キャスト -


ミルコ・ツェータ男爵 (駐仏公使)富樫 祐一
ヴァランシエンヌ (ツェータの妻)橋本 佳代子
ハンナ・グラヴァリ (陽気な未亡人)小野 芳
ダニロ・ダニロヴィッチ 伯爵 (若い大使館員)伊香 修吾
カミーユ・ド・ロジヨン (パリの伊達男)小林 正俊
カスカーダ子爵藤井 和之
ラウール・ド・サン=ブリオシュ細入 勇二
ボグダノヴィッチ (領事)木村 康博
シルヴィーネ (ボグダノヴィッチの妻)
クロモウ (参事官)伊藤 智之
オルガ (クロモウの妻)栃本 直子
ニェグシュ (大使館の雑用係)森 一将
〜グリゼットたち〜
ロロ青木 陽佳
ドド阿部 悦子
ジュジュ東條 景子
フルフル藤平 みどり
クロクロ斎藤 千恵
マルゴ伊香 史絵



東京大学歌劇合唱団
青木 陽佳、阿部 悦子、斎藤 千恵
深野 友美、藤平 みどり、東條 景子、
田尾下 哲、伊沢 拓、坂 敏秀



東京大学歌劇管弦楽団
Concert Mistress 高橋 篤子

Flute/Piccolo 斎藤 潔、遠藤 素子
Oboe/English-Horn 小松 光
Clarinet/Bass-Clarinet濱田 雅裕、大籐 豪一郎
Bassoon 橋口 健介、片寄 隆典
Horn 大野 健太、大野 真理子、渡辺 直樹
Trumpet 高地 勝幸
Trombone/Tuba 小泉 秀雄、小林 悟
Percussion  佐藤 敬、浜崎 広美
Harp 古屋 美和
1st Violin 大愛 崇晴、岸武 弘樹、高橋 篤子
2nd Violin 光田 晶、水野 明子、石井 聡一郎
Viola 三宅 章仁、伊吹山 秋彦、菅沼 志保子、野崎 竜平
Cello 小林 浩希
Doublebass 岸本 太郎、小宮 陽一

Mandolin 郡谷 瑞恵、関根 洋之



- その他舞台賛助出演 -

東京大学民族舞踊研究会水口 将輝、山田 佳奈子、伊藤 陽一、松岡 夕里子、
渡辺 忠孝、皆川 千春、若林 健吾、畑 可織、
堀 哲朗、谷本 光子、野間 英樹、古濱 彩子




- スタッフ -


演出: 井上 征剛
舞台設計富樫 祐一
照明大谷 悠紀子
道具細入 勇二

日本語台本片寄 隆典

振り付け藤森 恵子、野間 英樹 (Nr.7・民族舞踊)
伊香 修吾 (Nr.9)
永野 浩之 (Nr.10)
阿部 悦子 (Nr.14)



ものがたり


第一幕


物語の舞台はパリ、ポンテヴェドロ公国の駐仏公使館。 今夜はポンテヴェドロ国王の誕生日。
公使ミルコ・ツェータ男爵は、公使館で国王の誕生日を祝うパーティを開いている。
公使館には、フランス在住のポンテヴェドロ人達はもちろん、 フランス人の社交界の面々も集まり、大いに盛り上がっている。

だが、ツェータ男爵を悩ませている重大な問題があった。
死去したポンテヴェドロ人の大富豪、グラヴァリ氏の未亡人ハンナが、 再婚相手を求めてパリにやってきているというのだ。
もし、ハンナがフランス人の男と結婚すれば、 莫大なグラヴァリ氏の遺産はフランスのものとなってしまう・・・。
弱小国家、ポンテヴェドロにとっては、それは死活問題なのだ。

一方、ツェータの妻ヴァランシエンヌは、魅力的なパリの若者カミーユ・ド・ロジヨンに迫られている。
「私は貞淑な人妻よ」 と交わしながらも、その心が動いているのは明らか。
実は領事ボクダノビッチの妻シルヴィーネ、クロモーの妻オルガも、 それぞれパリの若者たちと火遊びを楽しんでいるのだが、夫達はそれに気付いていないのだ。

ツェータは、ボグダノビッチ、クロモー、そして召使いニェグシュらと、対策を練っている。
そして、先にハンナをポンテヴェドロ人の男と結婚させてしまえばいい、と結論し、 公使館付の若い書記官、ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵に白羽の矢を立てる。
が、ダニロはマキシムという酒場で酔いつぶれているという。 ツェータはニェグシュに、すぐにダニロを連れてくるように命じる。
その時、ハンナが公使館に到着する。 彼女の若さと美貌と財産に魅せられた男達にとりかこまれながら、 『私はパリは不慣れ』とかわすハンナ。
ヴァランシエンヌは、カミーユとの仲を終わらせるために、 彼とハンナを結びつけようとする。
が、カミーユにもハンナにもその気はない。 その上、いざカミーユが離れていくと、彼を追いかけてしまうヴァランシエンヌ。
一同がダンスホールへ去ったあと、ようやくダニロ・ダニロヴィッチが登場する。 まだ酒が残っていて上機嫌のダニロ。
ニェグシュが出迎えるが、しばらく休ませてくれ、といい、そのまま眠り込んでしまう。
そこへ、ハンナが大勢の男達に取り囲まれてホールからやってくる。 ハンナは男達を遠ざける。
一人になると、ハンナは 『貧乏な田舎娘だったころが懐かしい』と昔を思い出す。
『あのころはお金はなかったけど、本当に私を愛してくれる人がいた』と。
そのとき、部屋の隅からダニロのイビキが聞こえてくる。 ハンナはすぐさま、ダニロに気付く。
実は二人は昔、恋仲だったのだが、 ダニロの伯父にその関係を引き裂かれていたのである。
ダニロは目を覚まし、思わず『ハンナ!』と呼びかけるが、 すぐに我に返り、礼儀正しく『グラヴァリ夫人』と言い直す。


ハンナ (小野 芳=左) とダニロ (伊香 修吾)は、
顔を合わせれば意地の張り合い。


ダニロは今でもハンナを愛しているが、 大金持ちになってしまったハンナの財産目当てと思われるのが嫌で、そうとは言い出せない。
一方ハンナも、つい『今なら伯父様も許して下さるでしょう』と皮肉を言ってしまう。
怒ったダニロは、『もう決してあなたを愛しているなんて言いません!』と叫んでしまう。 ハンナはダンスホールに去る。
ツェータはダニロに、祖国の危機を救うため、ハンナと結婚するように命令する。 が、ダニロはそれを拒絶する。
その代わりに、ハンナにパリの男たちが近づかないようにする、と言う。
やがて鐘が真夜中を告げ、婦人が踊りの相手となる。 男達は口々に、自分を選んでくれるようハンナに訴える。

ダニロが何人かの婦人をつれて現れ、ハンナのまわりの男達の相手をさせる。
しかし、今度はヴァランシエンヌがカミーユを推薦する、といって現れる。
そしてハンナが指名したのは・・・ダニロ!
だが、ダニロは、その踊りの権利を1万フランで売ります、と言う。 男達はあきれ果てて立ち去る。
ダニロの振る舞いに腹を立てたカミーユは1万フラン払おうとするが、 ヴァランシエンヌが彼をダンスホールへと連れていく。
二人きりになると、ダニロは改めてハンナと踊ろうとする。 ハンナは最初抵抗するが、いつしかダニロにつられて踊り出す。

第二幕


第一幕の翌晩。
ポンテヴェドロ公使館の庭園では、 こんどはハンナの主催でポンテヴェドロ風の夜会が開かれている。
ハンナはポンテヴェドロに伝わる森の妖精ヴィリアの伝説を歌う。
また、祖国ポンテヴェドロ風の踊りも披露され、夜会は大いに盛り上がる。


「こうもり」以来2回目の賛助出演、東京大学民族舞踊研究会のみなさん



ダニロは、カミーユと関係している人妻が誰なのだか確かめようと、 ボグダノヴィッチの妻シルヴィーネ、 クロモーの妻オルガらに探りを入れるが、 結果はどちらもシロ。

サン=ブリオシュ、カスカーダらが現れ、 彼らのどちらがハンナの心を得ることができるかと口論を始める。
間に割って入ったダニロ、後から現れたツェータ、ボグダノヴィッチ、 クロモー、ニェグシュらは、 口々に女というのはわからない、と言う。
男達が去り、ダニロが一人になると、ハンナが現れ、相談に乗って欲しいという。
ハンナが、結婚したい相手がいる、と告白するので、 ダニロは気が気でない。
ハンナが、一緒に踊って欲しい、というので、 ダニロは最初にポンテヴェドロの踊り「コロ」を、 そして続いてワルツを踊る。
甘美なひととき。二人はそのままダンスホールへ去る。

今度はカミーユとヴァランシエンヌが登場。
別離れなければならない、というヴァランシエンヌに、 カミーユは、ではこの恋の形見の品を、と言う。
ヴァランシエンヌは自分の扇子に 「私は貞淑な人妻です」 と書くと、カミーユに渡す。
カミーユは、庭園の片隅にある四阿を指すと、 あそこなら誰にも見られない、最後の口づけを、と言い、 ヴァランシエンヌと二人で四阿に入っていく。
ニェグシュはその光景を目撃してしまう。 「こんなことが公使閣下に知られたら・・・」
そこへやってきたのは当のツェータ。 ツェータが四阿に入ろうとしたのを止めようとしたニェグシュは、 四阿にカミーユと女が、と口走ってしまう。
これでカミーユの相手の人妻がわかる、と喜んだツェータは、 鍵穴から中の様子を探ろうとする。
そしてみえた女はヴァランシエンヌ。 驚き、悲しむツェータ。 ダニロが慰めるが、やがてツェータの感情は怒りにかわり、扉をあけろ、と叫ぶ。
しかし、扉をあけて出てきたのは、カミーユと・・・ハンナだった!
ニェグシュの機転で、裏口からヴァランシエンヌとハンナが入れ替わっていたのだ。
今度は、ダニロが驚いた。 ハンナは一同を呼び集めると、カミーユと婚約した、と爆弾発言。

ダニロは怒り、昔話に託して「女はみな不実な生き物」と叫ぶ。 そしてマキシムへいって楽しむさ、というと立ち去る。
ハンナは、ダニロの怒りから、彼が自分を今でも愛していることを確信する。

第三幕


ハンナ主催の夜会はまだ続いている。 ハンナは、ダニロの行きつけの店、マキシムから、 人気のグリゼット(踊り子)達を呼び寄せた。
ヴァランシエンヌもグリゼットの扮装をすると、 グリゼット風の歌と踊りを披露する。


ハンナは人気グリゼットたちを公使館へ呼んだ。
ヴァランシエンヌもグリゼットに扮してその中に。



やがて一同が別室へさると、ダニロが戻ってくる。 ツェータはダニロに、なんとしてもハンナの気持ちを捕らえるよう命令する。
ダニロはハンナに、『ロジヨン氏との結婚を禁じます』という。 それは・・・国家の財政危機を救うためだと。
ハンナは、最初からカミーユと結婚するつもりなどなかったこと、 四阿へは別の女性の身代わりとして入っただけだ、と打ち明ける。
喜びをかくしきれないダニロは、 おもわずハンナの手を取って踊り出す。
やがてツェータをはじめ一同が戻ってくる。 ダニロは、ハンナがカミーユと結婚しない、と報告し事情を説明する。
では、カミーユの本当の相手は誰なのか? そこへ、ニェグシュが、四阿に落ちていた扇子を持ってくる。
それはヴァランシエンヌのものだ。 ツェータは、それでは自分がヴァランシエンヌを離縁し、ハンナと結婚するといいだす。
しかし、ハンナは、グラヴァリ氏の遺言で、 再婚すれば遺産をすべて彼女の手を離れる、と言う。
それでは祖国の財政を救うことは出来ない、と落胆するツェータ。
しかしダニロは、無一文になったハンナに、ようやく愛を告白し、 一同を証人にして結婚を申し込む。 二人を祝福する一同。
そこへヴァランシエンヌが現れ、ツェータの持っている扇子をさして、 『そこに書いてあることをよく読んで欲しいの』と言う。
そこには、『私は貞淑な人妻です』と書かれている。 さらにカミーユが現れ、『奥さんには振られた』というので、 ツェータも彼女を許す。
そして、ハンナはダニロに、遺言には続きがある、という。 再婚すれば遺産はすべて彼女の手をはなれ・・・すべて新しい夫のものとなる!
ダニロはしばし唖然とするが、一同に祝福される。 そして、全員の『女、女!』の合唱で幕を閉じる。


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