'97年12月のヴェルディ『仮面舞踏会』の上演の記録です。
作品に関するデータ
作曲: | ジュゼッペ・ヴェルディ
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原作: | ユージン・スクリーブ『グスタブ3世、または仮面舞踏会』
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台本: | トマーゾ・アノーニ (アントニオ・ソンマの偽名)
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初演: | 1859年2月17日、ローマ・アポロ劇場
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東大歌劇団の上演に関するデータ
1997年12月13日 三鷹市公会堂
- 演奏 -
総監督(指揮/演出): 小林 浩希
- キャスト -
グスターヴォ (T: 国王) | 内海 京久
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アメリア (S: レナートの妻) | 米岡 聡子
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レナート (Br: 国王の腹心) | 細入 勇二
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オスカル (S: 国王の小姓) | 阿部 悦子
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ウルリカ (A: ジプシーの占い師) | 羽生田 佳代
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ホーン伯爵 (Bs: 国王の敵) | 平山 昇
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リビング伯爵 (Bs: 国王の敵) | 森田 賢治
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クリスティアーノ (T: 水兵) | 青木 貴義
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主任判事 (T) | 高崎 幸二
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アメリアの召使い (T) | 真弓 智也
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東京大学歌劇合唱団
Soprano/Alto | 青木 陽佳、阿部 悦子、斉藤 千恵、園部 真理
田辺 美央、羽生田 佳代、米岡 聡子
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Tenor/Bass | 青木 貴義、内海 京久、大沼 太兵衛、高崎 幸二
高澤 晃行、平山 昇、細入 勇二、真弓 智也、森田 賢治
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練習ピアニスト | 根津 知美、阿部 芳子、榮羽 久美子、大村 千秋
渋谷 佳子、末平 由香、永野 裕之、三重野 清顕
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東京大学歌劇管弦楽団
Flute | 野間 健司、前田 さやか
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Oboe | 大澤 啓、梶尾 智
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Clarinet | 濱田 雅裕、榮羽 範子
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Bassoon | 加賀 保行、服部 なつき
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Horn | 荒井 浩之、多賀 望洋、樋高 綾、寺田 純子
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Trumpet | 高地 勝幸、冨田 貴洋
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Tronbone | 小泉 秀雄、関口 暁子、土屋 亘、吉田 理恵
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Percussion | 渋谷 佳子、浜崎 博美
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Violin | 岸武 弘樹、清水 瑠沙香、種村 拓夫、山島 達夫
山本 真帆、赤井 淳、坂井 洋介、前田 恵理子
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Viola | 赤塚 健太郎、串田 純一、本間 洋
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Cello | 片寄 隆典、大友 美季、金山 浩司
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DoubleBase | 小宮 陽一、玉城 烈
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- スタッフ -
日本語訳詞 | 阿部 悦子、小林 浩希、片寄 隆典、細入 勇二、米岡 聡子
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照明プラン | 榮羽 範子
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照明Op | 益田 凡
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衣装 | 阿部 悦子
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大道具 | 細入 勇二
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小道具 | 大友 美季
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ステージマネージャー | 富樫 祐一
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なお、上演に使用したオーケストラ・パート譜はカルマス版です。
ものがたり
第1幕
-第1場
18世紀末、スウェーデン国王の宮殿の王座の間。
貴族たちが、国内外にその名を轟かす、勇壮にして賢明なグスターヴォ3世の謁見を待っている (
『おやすみ我らが君』)。
しかし、王の徳治を逆恨みしている貴族リビングとホーンが人々に紛れ潜入し、 彼に復習の刃を突き立てようと密かに機を窺がっている。
そこへ小姓オスカルに導かれ、王が登場する。 舞踏会の出席者リストに目を通した彼は、そこにアメリアの名を見つけ、歓びに打ち震える (
『アメリア!あの人に会える!』)。
彼女こそ、彼の恋焦がれている女性。 しかし彼女は実は彼の腹心の宰相、レナートの妻なのである。
そこへ主任判事が、ウルリカというジプシーの女占い師を追放処分にして欲しいとの嘆願書を提出する。
オスカルから彼女の噂を聞いて好奇心を刺激されたグスターヴォは、レナートが咎めるのも聞かず、 皆で仮装してその女予言者を尋ね、占いを聞きに行こうと提案する。
-第2場
ウルリカの住む町外れの洞窟。
皆より先に到着したグスターヴォが物陰に隠れ様子をうかがっていると、 アメーリアが現われウルリカにグスターヴォへの秘めた思いを打ち明ける (
『何をそんなに脅えて…?』)。
真夜中に処刑場で忘却の魔法の草を摘んでくるようにいわれたアメリアは、 脅えながらも勇気を振り絞り、その言葉に従うことにする。
その健気な姿に感動し、彼女への思いを一層募らせたグスターヴォは、自分も今夜そこへ行こうと決意する。
そこへ、追いついた従者たちが登場、ウルリカに予言をと迫る。
漁師の扮装をしたグスターヴォは、ウルリカから『お前は今からお前の手を握る者によって殺される。』 と不吉な予言を受ける。
しかし主君を心配し皆を追ってレナートが現れると、グスターヴォはお告げは間違いだと笑いながら彼とがっちり握手する。
そこへグスターヴォの正体を感づいた水夫クリスティアーノが王をたたえながら登場、 皆で偉大な王をたたえる大合唱となる (
『おお祖国の父よ』)。
しかし運命の力を恐れるウルリカと、執念で王を狙うリビングとホーン、グスターヴォの恐れを知らない行動を憂慮するレナートの心は思い乱れる。
第2幕
寂しく不気味な処刑場でアメリアは草を見つけるが、 禁じられた恋と知りながらもグスターヴォを想い慕う心が、摘み取ろうとする手を躊躇させる。
そこへグスターヴォが到着、 2人はレナートへの友情、夫婦愛にそれぞれ苦しみながらもお互いに対する純粋な愛を確かめ合ってしまう。
しかし至福の時はほんの一瞬でしかない。
国王暗殺を企むリビング・ホーンの動きを察知したレナートがそこにやってきたのだ (
『あなたをお救いするために…』)。
刺客の影が近づき危機感の迫る中、アメリアはグスターヴォに自分など構わずに逃げるよう促し、 グスターヴォはレナートにこの女性の顔を見ずに町まで届けてくれと頼み、そこを去る (『夜の闇にあなたを狙う者たちが…』)。
そこへリビング・ホーンと暗殺者たちが登場(
『彼のところへ行こう…』)、彼らはアメリアのヴェールを奪い顔を見ようとし、レナートと小競り合いを起こす。
それを止めようとしたアメリアが割って入ると、ヴェールが取れてしまう。 絶句するレナート。
刺客たちは悲劇が喜劇に変わったと彼ら夫婦を嘲笑う。(
『アッハッハ!こんなおかしなこと町中大騒ぎ…』)。
明朝屋敷に来てくれ、と彼らに言うレナート。
彼の胸の中には、今まで只の一度も感じたことのなかったグスターヴォへの憎しみの感情が芽生えていたのだ。
第3幕
-第1場
妻アメリアを連れ自邸に辿り着いたレナートは彼女に死を要求する。
死ぬ前に我が子に一目逢わせてと懇願するアメリア。
レナートは幸せだった新婚の頃を回想しながら自分を裏切った国王への怒りを新たにする。
リビングとホーンが登場すると、レナートは彼らに加担し、暗殺実行の役を引き受ける。
そこへオスカルが仮面舞踏会の招待状をもって登場する(
『お入り下さい…』)。
楽しげにはしゃぐオスカルとは対象的に国王の死を予感し絶望するアメリア、復讐への黒い期待に燃えるレナートたち。
それぞれの思惑とは別に、運命の時は刻々と迫っていく。
-第2場
国王の私室で、グスターヴォはアメリアへの愛を忘れようと、 レナートをアメリアとともに故郷へ派遣する辞令に断腸の思いで署名する。
アメリアにもう会うまいと舞踏会出席を躊躇していた彼だが、 暗殺の企みを知り、死を恐れぬ国王として出席の決意を固める。
-第3場
華やかな舞踏会場。
アメリアはグスターヴォが会場に居ることに気付き、 逃げるように懇願するが彼は聞かない(
『ああ!どうしてここに…』)。
戸惑い苦しむアメリア、悲痛の面持ちで別れの言葉を言おうとするグスターヴォ、 しかしその時、一筋の凶弾が彼の胸を貫く。
犯人がレナートと知り驚く一同。
しかしグスターヴォは死に瀕して少しも恨みの表情は見せず、アメリアの純潔を訴え、全てを許し息絶える。
犯した罪の重さにうなだれるレナートや、リビング、ホーンまでもがその寛大な心に感銘し、 最後は全員が心から偉大な王を称えて幕となる。