1996年冬の公演『フィガロの結婚』です。

作品に関するデータ


作曲: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
原作: ボーマルシェ『たわけた一日、またはフィガロの結婚』
台本: ロレンツォ・ダ・ポンテ
初演: 1786年5月1日、ウィーン宮廷劇場

東大歌劇団の上演に関するデータ

1996年12月14日 三鷹市公会堂

- 演奏 -

総監督(指揮): 永野 裕之

- キャスト -


フィガロ (Br:伯爵の従僕) 細入 勇二
スザンナ (S:フィガロの許嫁) 阿部 悦子
伯爵夫人 (S) 木下 周子
アルマビーヴァ伯爵 (Br) 服部 洋一
ケルビーノ (Ms:伯爵の小姓) 栃本 直子
バルバリーナ (S:アントニオの娘) 東條 景子
マルチェリーナ (Ms:女中頭) 米岡 聡子
バルトロ (Br:音楽教師) 高澤 晃行
バジリオ (T:) 倉田 洋介
ドン・クルツィーオ (T:裁判官): 田尾下 哲
アントニオ (Br:庭師) 富樫 祐一


東京大学歌劇合唱団
青木 陽佳、阿部 悦子、木下 周子、斉藤 千恵、東條 景子、
栃本 直子、米岡 聡子、
青木 貴義、倉田 洋介、篠原 明仁*、田尾下 哲、高崎 幸二、
高澤 晃行、冨樫 祐一、服部 洋一*、細入 勇二


東京大学歌劇管弦楽団
Concert Master 大愛 崇晴
Flute 遠藤 素子、野間 健司
Oboe 三熊 亜弓*、池田 恵子*
Clarinet 大藤 豪一郎、濱田 雅裕
Bassoon 戸川 安康*、細田 貴子*
Horn 石川 由子、岩岡 哲夫*
Trumpet 高地 勝幸*、小泉 秀雄*
Timpani 小野 芳
Cembaro 伊香 修吾
Violin 石井 聡一郎、岸武 弘樹、高橋 篤子、
藤森 慈子、光田 晶、柳沢 賢、中田 祥ニ郎*、
水野 明子*、春山 晶子
Viola 斉藤 潔、藤井 和之、片寄 隆典、伊吹山 秋彦*、
清水 智彰
Cello 小林 浩希、岩田 吉晴*、藤見 清加*
Doublebass岸本 太郎


練習ピアニスト
甕 真希子*、井上 征剛、永野 裕之、木下 志津子*、関 麻紀子*、
露木 玲、伊香 修吾、三重野 清顕*

(*印は賛助出演)

- その他舞台賛助出演 -

大道芸人 マラバリスタ (中村亨、馬込綾子、奥村真紀子、南博史)
モミュスのウェイター 石原 大助、貝塚 芳久
第二幕パレードの隊長 小松 晋一郎

- スタッフ -


演出 井上 征剛
舞台監督田尾下 哲
舞台助手露木 玲
照明操作大谷 悠紀子
日本語補訳
(No.6/No.24/No.25)
片寄 隆典

なお、上演に使用したオーケストラ・パート譜は、 トヨタ・ミュージック・ライブラリーより借用させていただきました。

ものがたり

第一幕 伯爵邸の一室 /フィガロとスザンナの結婚式の日の朝

フィガロは伯爵からもらうことになっているベッドを入れようと床の寸法を計り、 一方スザンナは鏡台に向かい、結婚式でかぶる髪飾りを試着している (二重唱「30、60」)。
フィガロはスザンナの手作りの髪飾りが気に入るが、 スザンナは伯爵の意図も知らずにのん気に部屋の寸法を計っているフィガロをからかう (二重唱「奥方様が御用の時は」)。
屋敷で1番便利なこの部屋が、実は伯爵がスザンナと浮気するためのものだと知らされて、 フィガロは伯爵と戦う決意をする (カヴァティーナ「殿様がダンスならば」)。
フィガロと入れ違いに、バルトロとマルチェリーナが登場。
マルチェリーナは年甲斐もなくフィガロに思いを寄せており、借金の証文をたてにスザンナとの 結婚をくい止めようと、バルトロに協力を求める。
バルトロは、フィガロの手助けで伯爵にロジーナ(現伯爵夫人)を奪われた怨みを思い出す (アリア「あだ討ちじゃ」)。
バルトロが退場した後入ってきたスザンナに、マルチェリーナは敵意をあらわにし、 スザンナも負けずにやり返す(喧嘩の二重唱「お先へどうぞ、綺麗なお方」)。
マルチェリーナと入れ替わりに、ケルビーノ登場。
ケルビーノは、バルバリーナと一緒にいるところを伯爵に見つかって暇を出され、 伯爵夫人のとりなしがないと許してもらえない。
伯爵夫人のリボンにくちづけし、夫人へのつのる思いを歌う (アリア「もうどうすればいいのか」)。
伯爵が登場する気配に、ケルビーノは慌てて椅子のうしろに隠れる。 伯爵はうろたえるスザンナの手をとり、 「私がどんなにお前を愛しているかよく知っているだろう、もし夕暮れに庭で・・・」と誘いかけているところへ、バジリオ登場。
伯爵は急いで椅子の後ろへ隠れ、ケルビーノはやむなく椅子に上がり、スザンナに隠してもらう。
バジリオは、伯爵がスザンナに気のあることを告げ、受け入れた方がよいとほのめかし、 ことのついでに、ケルビーノが伯爵夫人を愛しているのではないか、とももらす。
伯爵は聞き捨てならぬと姿を現し、スザンナは何とかこの場をとりつくろおうとする (三重唱「けしからぬ、すぐさまあやつを追いだせ」)。
伯爵は昨日バルバリーナの部屋で机がけの下にケルビーノが隠れていた、 と同じような仕草で椅子の覆いをとる。
と、そこにケルビーノがいた。うろたえるスザンナ、笑うバジリオ。
そこにフィガロが村人達を連れて登場。
伯爵の初夜権の放棄をみんなの前で確認させようとする (村人たちの合唱「さあ若者よ、花をまいて」)。
伯爵はフィガロの企みに気づくが、そしらぬ顔で放棄を認め、二人の結婚式を夕刻にとり行なうと宣言する。
農民達は伯爵の寛大な心に感謝する。 村人達が去ると伯爵はケルビーノを連隊の士官に任命し、すぐ出発するように命ずる。
落胆するケルビーノをフィガロはからかいながら励ます (「もはや飛べまい、この蝶々」)。
行進曲に送られてケルビーノはセビリアへと向かう。

第二幕 伯爵夫人の部屋/その日の昼

伯爵夫人がひとり窓辺にたたずみ、愛されぬ妻のわびしさを歌う (カヴァティーナ「聞き給え、愛の御神」)。
スザンナが登場し、伯爵が誘惑の手を自分にのばしてきたと告げる。
そこへ鼻歌まじりにやってきたフィガロは、伯爵の策略を語ってきかせ、 今夜、奥方が秘かに男と逢引すると書かれた手紙が、バジリオから伯爵の手に渡るようにし、 伯爵があわてているすきに、フィガロとスザンナは結婚式をあげてしまおう、 と手はずを整える。
また一方、ケルビーノをスザンナのように女装させて、 今夜伯爵と庭で密会させることにする。
フィガロに代わってケルビーノ登場。 ケルビーノはスザンナのギター伴奏で、伯爵夫人に捧げる歌をうたう (アリア「恋の悩み知る君よ」)。
スザンナは戸口の鍵を閉め、早速ケルビーノの女装にかかる (アリア「さあ、膝ついてここに」)。
そこへ狩りから戻ってきた伯爵がやってくる。 その間にケルビーノは衣装部屋に隠れるが、伯爵がうろたえる夫人を問いつめ、 さらにフィガロの書いた逢引の手紙を見せている間に物音をたててしまう。 疑惑を強めた伯爵に対し、夫人は思い余って「スザンナです」と答える。
二人が言い争っている間に、スザンナはこっそり部屋に戻ってきて物陰から覗いている (三重唱「スザンナ、出ておいで」)。
伯爵は夫人を連れて、ついに衣装部屋の扉を開ける道具をとりに行く。 この間にケルビーノは衣装部屋から出てきて、スザンナの止めるの も聞かず、窓から庭に飛び降りる (二重唱「開けてよ早く」)。 代わりにスザンナが衣装部屋に入る。
伯爵と夫人が引き返してくる。 夫人は伯爵の追求にたまりかねて、ついケルビーノが中にいると白状してしまう (以下、フィナーレ)。
ところが伯爵が扉を開けてみると、中から出てきたのはスザンナ。 立場は逆転し、伯爵はあらぬ疑いをかけたことを謝る羽目に陥る。
フィガロが登場、式の用意ができたと知らせる。 伯爵はフィガロに例の手紙を見せ、問いつめるが、フィガロはあくまでもしらをきる。
そこへ庭師アントニオが現れ、窓から人が飛び降りて、花壇の花がめちゃくちゃになった、と言う。
フィガロは、それは自分だと足をさすってみせる。 アントニオが、ケルビーノが落した辞令を見せると、夫人とスザンナの入れ知恵で、 フィガロはとっさにその辞令には判がない、と切り抜ける。
そこへ、マルチェリーナ、バルトロ、バジリオが現れる。 三人はフィガロに、借金の返済ができない時には、契約通りマルチェリーナと結婚せよと迫る。
伯爵は事実を審議することを約束する。 フィガロたちがうろたえ、マルチェリーナたちが勝ち誇るうちに、裁判が開廷する。

第三幕 婚礼の準備が整った広間/その日の夕方

伯爵が前幕のことを思い出しているところへ、伯爵夫人とスザンナが舞台奥に登場。
夫人はスザンナに伯爵と庭で落ち合う約束をさせ、 スザンナの代わりに自分が変装していこうという筋書きである。
スザンナは確かに伯爵に近づき、密会を約束する (二重唱「この胸焦がす恋の悩みに」)。
そこへ現れたフィガロに、スザンナは「訴訟に勝ったも同然よ」とささやいて退場。 フィガロはよく飲み込めないままに彼女の後を追う。
伯爵は「主人がため息をついている時、召使が幸せになってよいものか」と憤る (レチタティーヴォとアリア「家来は浮かれて、わしはいら立つ」)。
フィガロ、マルチェリーナ、バルトロ、バジリオ、村人たちが、裁判官ドン・クルツィオとともに登場。
ドン・クルツィオは、フィガロが借金を返せないのならばマルチェリーナと結婚せよと言い渡す。
しかしフィガロは、行方のわからない両親の承諾もなしには結婚できないと言い張り、 自分が発見された時の服や腕の入れ墨のことを語る。
ところが意外にも彼の母親はマルチェリーナ、父親はバルトロであることがわかる (六重唱「愛しやわが子よ、この母を抱いて」)。
伯爵とドン・クルツィオは失望し、 一方後からやってきたスザンナはマルチェリーナやバルトロと和解する。 バルトロとマルチェリーナもこの際正式に結婚しようということになり、 二人ともフィガロとスザンナに協力を約束する。
全員退場した後、バルバリーナとケルビーノ登場。 バルバリーナはケルビーノを女装させて、他の娘たちと一緒に、夫人に会いにいこうと誘う。
スザンナの帰りを待ちながら、夫人は伯爵への愛を思う (レチタティーヴォとアリア「喜びの日よ、今いづこ」)。 一方、アントニオは伯爵に、ケルビーノは自分の家にいる、と報告する。
両人が退場した後、伯爵夫人とスザンナ登場。 計画はうまくいったと、スザンナが語る。 夫人はスザンナに、密会の手紙を書かせる (手紙の二重唱「風によせる」)。 手紙は、夫人のピンで封をする。
村の娘達登場、その中には女装したケルビーノもいる。 村娘はそれぞれ花を夫人に捧げる。


村娘たちの中に女装したケルビーノもいる(左端)

そこへアントニオが登場、娘の一人が実はケルビーノであると暴く。
伯爵はケルビーノを罰しようとするが、バルバリーナが伯爵にキスされたことを暴露したために、見逃さざるをえない。
フィナーレは婚礼の行進曲から始まる。 バルバリーナと村娘が伯爵を讃える歌をうたい、合唱が続く。
スザンナは例の手紙をこっそりと伯爵に渡す。
手紙をみて喜んだ伯爵は、宴を盛大に行うと宣言し、みなが伯爵の偉徳を讃えるなか、 夫人を伴って退場する。
村人たちは、新郎新婦を祝福して歌い踊る。

第四幕 伯爵邸の庭/その日の夜

バルバリーナが、伯爵からスザンナに渡すように命じられたピンをなくして探している (カヴァティーナ「あわれな小針よ」)。
フィガロとマルチェリーナが登場。 フィガロはピンの話を聞いて、マルチェリーナのピンを渡す一方で、スザンナに疑惑を抱く。
憤然と去るフィガロを見送ったマルチェリーナは、同姓のスザンナを守ろうと、女性の団結を歌う (アリア「牡山羊と牝山羊は」)。
バルバリーナが引き返してきて、あづまやに入ってケルビーノが現れるのを待つ。
続いてフィガロが密会の現場を証拠だてるため、バルトロとバジリオ、アントニオ、村の男たちを連れてくる。
バジリオは、人生の極意は危険を避けることだと歌うが、男たちは相手にせず、 フィガロの指示通り物陰にかくれる(アリア「まだ世界をあまり知らない頃には」)。
フィガロはスザンナへの、女への怒りを歌い、世の男たちに警告する (レチタティーヴォとアリア「眼を開け、世の男ども」)。
スザンナと伯爵夫人が互いに衣装を替えて、マルチェリーナや村娘たちとともに登場。 夫人とマルチェリーナはあづまやに入り、村娘たちは物陰に隠れる。
一人になったスザンナは、フィガロへの愛を歌う (レチタティーヴォとアリア「早く来てね、愛しい人」)。
続いて登場したケルビーノは、スザンナと間違えて夫人に言いよろうとするが、 そこへ伯爵が割って入る (以下4幕フィナーレ)。
ケルビーノはあづまやに逃げ込み、彼をこらしめようとした伯爵は、 間違えてフィガロに平手打ちをくらわせてしまう。
伯爵は村人たちの見守るなか、夫人をスザンナだと信じて甘い言葉をささやく。
そこへ松明の明りが見え、2人退場。
夫人に変装したスザンナは、フィガロに伯爵への復讐を呼びかける。 フィガロはスザンナの変装に途中で気がつくが、そのままそ知らぬ顔で彼女を口説く。
怒ったスザンナは、フィガロをめった打ちにするが、 フィガロは相手がスザンナであることがわかっていて口説いたんだと告げ、二人は仲直りする。
そこへ伯爵が登場。スザンナを夫人と思い、人々を呼び集めて彼女の不義を暴く。 ところが本物の夫人が現れて、伯爵の浮気が明らかとなり、 逆に伯爵がひざまずいて夫人に許しを乞う。
一同和解し、全員で喜びを歌ううちに、たわけた1日は終る。

舞台裏

今回もいろいろあった…… 搬入の時小道具を運搬車が牽いてしまったとか (バキ!といやーな音がしたっけ)……。
ステリハでキャストが打ち合わせと全然違う動きをするので照明が追いきれず、 本番がヒヤヒヤものだったとか……。
このフィガロの結婚の台本ですが、基本的には出版されているものを用いていますが、 なにしろ言葉がすごい。
『ワシはやるのぢゃ!』という調子。 あまりに時代がかった部分を適宜なおして使っています。
また、通常はカットされてしまういくつかのナンバーには日本語訳がついていなかったので、 新しく書き下ろすことになりました。
でもこれをやると、はっきり前後のナンバーと言葉遣いが違ってしまっているんですよね……。
フィガロ役の細入君は大道具のチーフでもあり、ほとんど逝ってしまっていました。
めずらしく道具の仕上がりが比較的早かったので、 『これは前日はちゃんと寝られる!』と誰もが思っていたのに……。
運搬車のエンジントラブルで結局徹夜作業になってしまうなんて。 我らがフィガロ君は当日は完全に逝ってました。
みんなが神を信じなくなった一日(いや、二日だ)でした。
というわけで、名実ともに『たわけた一日』でした。


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